皆さん、2027年に介護保険が改正されることをご存じでしょうか?
「よくわからないし、そこまで大きく変わらないんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、それは少し危険な考え方です。今回の改正は、これまで以上に大きな変化があると予想されており、介護業界全体に大きな影響を与えるものになると考えられています。
もちろん、業界が180度ひっくり返るほどではありません。ただ、それに近いぐらいのインパクトがある内容なので、今日は2027年の介護保険改正について、できるだけわかりやすく解説していきます。改正の内容をまだしっかり理解できていないという方は、ぜひ最後までご覧ください。
このチャンネルでは、介護業界で働く方や介護に関心がある方に役立つ情報を発信しています。ぜひ最後まで見ていただけると嬉しいです。では早速始めていきましょう。
改正の背景
介護保険制度は、基本的に3年に一度見直しが行われています。直近では2024年に改正があり、次は2027年の予定です。2024年の改正では、介護職員の処遇改善や事務作業の効率化などが中心でした。
しかし2027年の改正は、利用者負担や制度そのものの仕組みに大きく関わる内容になる見込みです。その背景には「団塊の世代が2025年に後期高齢者になる」という大きな転換点があります。高齢者の数が一気に増えれば、介護を必要とする人も増えます。
その一方で、介護保険を支える現役世代は減少しています。税収や社会保障費のバランスが崩れ、従来の仕組みのままでは維持できなくなってきているのです。そのため、負担とサービスのあり方を大きく見直す必要が出てきました。
主な改正ポイント
1. ケアプランの有料化
現在、ケアマネジャーが作成するケアプランは無料で利用できます。しかし2027年以降は有料化される可能性があります。金額はまだ決まっていませんが、月数百円から数千円程度になると予想されています。
これまで無料が当たり前だったサービスに費用がかかるとなると、利用者の負担は増します。結果として「お金を払うならケアマネジャーに頼まず、自分で計画を立てよう」と考える人も増えるかもしれません。
2. 要介護1・2の地域支援事業への移行
次に注目されているのは「要介護1・2」の人たちの扱いです。これまでは介護保険サービスを利用していましたが、今後は市区町村が運営する地域支援事業に移行する可能性があります。
具体的には、デイサービスや訪問介護などが「地域の独自サービス」に置き換わるかもしれません。そうなると、サービスの質や提供体制に差が出やすくなり、住んでいる地域によって受けられる介護の内容が変わる恐れがあります。
3. 利用者負担の増加
現在、多くの利用者は介護サービス費用の1割を自己負担しています。しかし今後は、現役並みの所得がある高齢者については、2割から3割負担になるケースが増える可能性があります。
つまり「年金や収入がそこそこある人」は、これまでよりも大きな負担を求められることになります。利用者の立場からすると、介護サービスを使う際の心理的ハードルが高くなり、利用控えが進むかもしれません。
4. ICT導入と人材配置の見直し
介護現場の人手不足を補うため、ICT(情報通信技術)の導入や人員配置の基準緩和も検討されています。具体的には、見守り機器や記録システムの活用で業務効率を上げたり、人員配置を柔軟にしたりする方向です。
一方で「人が少なくても機械で補える」という発想には賛否があります。人と人との関わりが重要な介護において、どこまで機械に頼れるのかという課題も残ります。
CTの導入による介護現場の変化
例えば眠りスキャンやお腹に貼る排泄センサーといった機器だけでなく、介護記録のシステム化など、さまざまな業務がICT化されています。これにより介護士の業務負担を軽減しようという流れが進んでいます。ICTを導入することで、業務の標準化を図ることもできます。
これまで介護の仕事は、経験豊富な職員が「Aさんはこの時間にこうした方がいい」といった具合に、いわば職人技として代々引き継いできた部分が大きかったと思います。しかし、そのやり方では人材が定着しにくく、その職員がいなくなった場合の対応にも困ることがあります。
ICTを導入すれば、利用者一人ひとりの情報をデータ化して把握でき、そのデータを基に皆で共有し、同じようなケアを提供できるようになります。またICTによって、人間では気づきにくい点を察知できるようにもなります。
夜勤時の巡回では、実際に寝ているかどうかを目で見ても判断しづらいことがありますが、眠りスキャンを導入すれば正確に把握できます。こうした仕組みにより、業務の効率化や正確性が大きく向上していくのです。
人員配置見直しの必要性
このようにICTを導入することで、人が関与しなくてもよい業務が増えていきます。そのため「従来通りの人員配置は本当に必要か」という議論が出てきています。人員配置の緩和は、慢性的な人材不足に悩む事業者にとっては大きな助けとなるでしょう。
介護士の中には「今の状況でさらに人が減るのは厳しい」と考える人もいると思います。しかし、業務内容を見直すことで「本当にこの人数が必要なのか」と考えるきっかけになるはずです。人員配置の見直しは、施設運営の在り方に大きく関わる重要なテーマだといえます。
一方で、まだICTを導入できていない施設も多く、導入しても現場職員が使いこなせないケースも少なくありません。そのため職員のリテラシー向上も大きな課題です。
AIやICTの活用と可能性
今ではChatGPTのようなAIが注目されていますが、まだ使ったことがない方も多いと思います。これからの時代、AIやICTを活用できなければ仕事は難しくなるでしょう。
私自身も基本的に一人で仕事をしていますが、一人でできることには限界があります。だからこそAIに一部を任せ、自分は別の業務に取り組むようにしています。うまく取り入れれば、AIやICTは便利で頼れるパートナーになります。
介護現場でもICTの導入は大変に思えるかもしれませんが、一度その壁を越えれば、より働きやすい環境になるはずです。ぜひ学びながら取り入れていただきたいと思います。
経営の共同化と業界の動き
次に、5つ目のポイントとして「経営の共同化」が挙げられます。前回の改定では訪問介護の加算が減らされたことが大きな話題になりました。これは国として、小規模事業者にも頑張ってほしい気持ちはありつつも、資本力と体制の整った法人に業界をリードしてほしいという背景があると考えられます。
小規模事業者は単独ではなく、地域や同業者同士で情報交換を行い、互いの環境を良くしていくことが求められます。介護業界は横のつながりが少なく、ブラックボックス化していると感じることも多いですが、ネットワークを築くことで利用者が効率的にサービスを受けられるようになります。
ただし、大手に一本化されると、小規模事業者ならではの柔軟な対応が失われる懸念もあります。だからこそ、大手と小規模事業者がそれぞれの強みを活かし、時には新しいビジネスが生まれることで業界の新陳代謝を進めていくことが大切です。
2027年介護保険改正のまとめ
今回は2027年の介護保険改正について5つのポイントを解説しました。もちろん他にも改正点はありますが、大きな流れとしては「効率的で柔軟な介護サービスの展開」が掲げられています。
国は介護保険に縛られず、自主的にサービスを展開し稼げる環境づくりを後押ししています。これは古い体質の事業者にとっては厳しい変化ですが、新しい発想を持つ事業者にとっては大きなチャンスです。
ただし、この変化によって介護サービスを受けられなくなる人が出てしまう可能性もあります。それを防ぐために、今からどう取り組むべきかを早急に考える必要があります。
介護業界で働く人だけでなく、日本に住む誰にとっても関わる問題です。例えば自分の親が地方で介護サービスを受けたいと考えても、施設や資金の問題で利用できなくなる可能性があります。